メイクドラマその4 歌の奥行きとその世界観:「クリスマスはカリプソで」

メイクドラマ

■クリスマスはカリプソで

クリスマスはカリプソで
作詞:KURO 作曲:西岡恭蔵

 (Refrain)
 写真より 手紙より とびきりの笑顔に
 唄いたい カリプソを X‘mas の夜は

 島へ向かう船に 乗込む男達
 12月の桟橋 誰もが上機嫌
 子供達の為に 両手一杯のプレゼント
 君には俺のLOVE SONG聞かせてあげよ

 (Refrain)

 夢見てきたよ 10トン トラックの中で
 寂しさまぎらすために ラジオを鳴らしてた
 陽気に流れるジングル・ベル 口ずさむ度に
 思いは遥かな ふるさとの島

 (Refrain)

 波間に揺れている 優しい島かげ
 懐かしい風に もうすぐ逢えるだろう
 入江の向こうで 手を振る子供達の
 俺を呼ぶ声が 聞こえそうさ

 (Refrain)

この歌、いきなりサビのメロディから入る曲です。カリビアンの空気を遺憾なく発揮したその曲調、とてもごきげんな音楽なのです。

この歌の背景が貴方には思い浮かぶでしょうか?

北米と南米の間に広がるカリブ海にはいくつもの島国があります。カリプソという音楽はトリニダード島に生まれた音楽で、その島の位置はベネズエラのすぐ北にある島国です。

少しこの歌の背景について考えてみましょう。まずカリブ海諸国には貧困な国が多く、人々は生活のために収入のいい仕事のある北米大陸に出稼ぎに出るわけです。

日本で言うなら、東北のオヤジさんが冬場に東京に来て稼ぐというようなことでしょうか。そして正月に満面の笑顔で故郷に帰るというようなことかな。

この歌にはそういう国々の社会・経済事情が見え隠れしています。出てくる男性は長距離トラックに乗って稼ぐオヤジで、異国での寂しさをまぎらすためにカーラジオを鳴らしているという設定。

しかし12月ともなると、さすがに故郷の島のことが気にかかり郷愁におそわれるのです。彼らにとってクリスマスの意味は特別に大きいのです。

一言で言えば、そんなシチュエーションにこの地域における南北問題が社会背景としてしっかりと描かれていて、そのキャンバスの上に「家族」というドラマが展開されているということのスゴさがお分かりいただけるでしょうか。

たかが歌でもここまでドラマメイクができるのです。島にはクリスマスともなれば、お土産をたくさん持って帰省した父親たちが誇らしげに桟橋に降り立つのです。

大喜びで出迎える子どもたちの向こうには、愛する妻の笑顔がくっきりと見えるような気持になるのは私だけでしょうか?

もう一度言いますが、歌の社会的背景がちゃんとあってその背景が描かれたキャンバス上での家族ドラマがある。そこにこの歌の奥の深さと地域的空間の広がりあるのです。

「カリプソ」という言葉選びのたった一言だけで、カリブ海とその国々やトリニダード島が連想されるというとても効率の良いキーワードとなっています。カリブ海地域のその風土までもが何となくイメージされませんか?

そんな奥行きと広がりのある作品を、今シンガー・ソングライターを目指すあなたにも是非とも作って欲しいのです。

■この歌と「X’mas Song」というアルバムについて

「クリスマスはカリプソで」の曲の作詞は奥様のKUROさんです。KUROさんは、恭蔵さんとの結婚後に作詞を始められて最初の作品が「アフリカの月」(アルバム「南米旅行」に収録)だそうで、最初からぶっ飛ぶくらいの名詞・名曲です。

このアルバムは、1997年大阪のBanana Hallで録音されたものですが、リリースされたのは恭蔵さんの亡くなった後(2003年)のことです。

そしてその中にはKUROさん作詞の曲は3曲です。(3/10) その中の1曲がこの「クリスマスはカリプソで」でKUROさん(女性)の作った男歌です。

親友の大塚まさじさんが、音源を発掘して10曲入りのクリスマスソング集として発売されたものです。それは、生前の恭蔵さん(1999年没)とKUROさん(1997年没)がクリスマスソングのアルバムを出したいと思っておられたという意志に沿ったものです。

実は、お二人は歌が10曲揃ったらアルバムを出すということを決めていたらしいのですが、クリスマスソングが9曲できた段階で、二人とも他界されたわけです。

そこで、大塚さんはその9曲ともう1曲を恭蔵さんの生前最後のアルバム「Farewell Song」(1997年12月10日リリース)の中の「Glory Hallelujah」を加えて10曲にしてリリースされたのです。

時系列的にまとめて言いますと、
・1997年4月4日・・・KUROさん死去(乳がん)46歳
・1997年12月10日・・・「Fare well Song」リリース(生前最後のアルバム)
・1997年12月18日・・・バナナホール収録(X’mas Song)
・1998年3月30日・・・「KUROちゃんを唄うコンサート」 開催、
            トリビュートアルバム発売(10月23日)
・1999年4月3日 恭蔵さん死去(自殺)50歳
・2003年・・・・・・・・アルバム「X’mas Song」のリリース
 となります。

お二人は、出会いから亡くなられる時まで、深く愛し合っておられて、最後は命日の前日の自殺(後追い?)という何とも言えない結末となっています。

私は、このアルバムを手にした時から、半年間くらいの長い間、シーズンでもないのに車の通勤時に毎日聞いていた時期があります。

【参加したメンバー】

西岡恭蔵 (アコースティクギター)
植原 裕 (ドラム)
大庭珍太 (ベース)
秋本 節 (クラリネット・アコギ)
山崎元治 (エレクトリックギター)
国府利征 (ピアノ)
駒沢裕城 (ペダルスティールギター)
大上留利子 (コーラス)
ジェニファ・ヨネダ (コーラス)

これだけのメンバーと楽器を使っているので、ライブとしてはかなりの厚みのあるものになっています。

■恭蔵さん、その他のアルバムについて

私は、この「クリスマス・ソングス」の少し前の、生前最後にリリースされたアルバム「Fare well Song」を聞くたびに、これはKUROさんに対する恭蔵さんの永遠のラブソングなんだといつも思うのです。ラブソングとはこうありたいものだとも思います。

また、70年代中ごろから81年ごろに、夫婦二人で気ままな旅をしながらの作詞・作曲、歌作りの旅3部作というものがありまして
・「南米旅行」
・「ヨーソロ」
・「ニューヨークto ジャマイカ」
の3つのアルバムなのですが、いずれ劣らぬ名作揃いなのです。

個人的な事ですが、私の場合、南米旅行に行かれた後に東京のライブハウスでまだアルバムになる前の生歌を聞いたことが恭蔵さんにのめり込む最初でした。特に「アフリカの月」です。

それが、私にとっての最初で最後の恭蔵さんのライブ視聴でした。思い出深いです。

恭蔵さんの亡くなられた後、2000年代に入ってからもベストアルバムやゴールデンベストアルバムなどが出ていて、あらためて恭蔵さんの歌の力を感じるのですが、最近出ている中部 博さんによる「西岡恭蔵 伝」を読んでいると気持ちが新たになる思いです。

その本によると、恭蔵さんは当初1974年の「プカプカ」という安田南さん(女性ジャズシンガー)をテーマにした破天荒な歌で世に出たひとです。

この歌は何十人ものシンガーがカバーしていて有名なスタンダードナンバーなのですが、貴方もカラオケでも歌ってみられてはいかがでしょうか。

私も近々チャレンジしてみようかなと思います。そうやって、恭蔵さんの歌が、もっともっとたくさんの人たちに聞き継がれていくといいなぁと祈っています。



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