■荒井由実は、70年代、既に一次ブームを迎えていた。
1971年 作曲家デビュー(元タイガースの加橋かつみに歌の提供)
1972年 多摩美術大学入学、同年「返事はいらない」シングルデビュー(7月)
1973年 「ひこうき雲」アルバムデビュー(11月)
1974年 ステージ活動開始
1975年 シングル「あの日に帰りたい」(TBSドラマの主題歌)、
「いちご白書をもう一度」(バンバンに提供)がヒット
1976年 11月 横浜山手教会にて結婚式
1978年~1983年 毎年2枚のアルバムをリリース
※これらは大まかにですが、ユーミンの70年代の経緯です。
私は、ユーミンに関して時系列的な研究をしてきたわけではありません。じっくりと深くハマったのは、アルバムで言えば「紅雀」「OLIVE」「悲しいほどお天気」「時のないホテル」の四作についてです。
年代では、1978年~1980年当時のことで、これらは結婚後「松任谷由実」に改名した後のアルバムであります。アルバムの売れ行きはまあまあですが、シングルのヒットはイマイチです。
この時期のシングルは「ハルジョオン・ヒメジョオン、罪と罰」(80位)「入江の午後3時・静かなまぼろし」(88位)「埠頭を渡る風 ・キャサリン」(71位)「帰愁・稲妻の少女」(89位)、「ESPER ・よそゆき顔で」(77位)あたりです。
収録アルバムとしては
「ハルジョオン・ヒメジョオン、罪と罰」→「紅雀」(1978)、
「埠頭を渡る風 ・キャサリン」→「流線形」(1978)
「稲妻の少女」→「OLIVE」(1979)
「よそゆき顔で」→「時のないホテル」(1980)
「ESPER」→「REINCARNATION」(1983)
しかし、ヒットが爆発的ではなかったことと曲の良し悪しが別だということは、これらの歌を聴けばよく分かることで、私にはこの時期のアルバムのレベルはとても高く、むしろ高すぎて聴衆がその価値を見極めきれなかったということの方が、事実に近いように思われます。
単純に言えば、奥が深くて反って素人受けしなかったということだと思います。このころのユーミンは芸術性がとても高くとも、もっと商業的な成果を求めるために(?)80年代、90年代はポップス性を高めたのでした。そして、折しも高度経済成長下、女性たちの心情の機微をわしづかみにするようにしてまさに時代の波に乗ったのでした。
■全時代を俯瞰するとこうなります
オリジナルアルバム
発売日 タイトル 最高位
1 1973年11月20日 ひこうき雲 9位
2 1974年10月5日 MISSLIM 8位
3 1975年6月20日 COBALT HOUR 2位
4 1976年11月20日 14番目の月 1位1980年
5 1978年3月5日 紅雀 2位
6 1978年11月5日 流線形’80 4位
7 1979年7月20日 OLIVE 5位
8 1979年12月1日 悲しいほどお天気 6位
9 1980年6月21日 時のないホテル 3位
10 1980年12月1日 SURF&SNOW 7位
11 1981年5月21日 水の中のASIAへ 9位
12 1981年11月1日 昨晩お会いしましょう 1位
13 1982年6月21日 PEARL PIERCE 1位
14 1983年2月21日 REINCARNATION 1位
15 1983年12月1日 VOYAGER 1位
16 1984年12月1日 NO SIDE 1位
17 1985年11月30日 DA・DI・DA 1位
18 1986年11月29日 ALARM à la mode 1位
19 1987年12月5日 ダイアモンドダストが消えぬまに 1位
20 1988年11月26日 Delight Slight Light KISS 1位
21 1989年11月25日 LOVE WARS 1位
22 1990年11月23日 天国のドア 1位
23 1991年11月22日 DAWN PURPLE 1位
24 1992年11月27日 TEARS AND REASONS 1位
25 1993年11月26日 U-miz 1位
26 1994年11月25日 THE DANCING SUN 1位
27 1995年12月1日 KATHMANDU 1位
28 1997年2月28日 Cowgirl Dreamin’ 1位
29 1997年12月5日 スユアの波 2位
30 1999年11月17日 FROZEN ROSES 3位
31 2001年6月6日 acacia (アケイシャ) 2位
32 2002年11月20日 Wings of Winter, Shades of Summer 2位
33 2004年11月10日 VIVA! 6×7 5位
34 2006年5月24日 A GIRL IN SUMMER 3位
35 2009年4月8日 そしてもう一度夢見るだろう 4位
36 2011年4月6日 Road Show 2位
37 2013年11月20日 POP CLASSICO 2位
38 2016年11月2日 宇宙図書館 1位
39 2020年12月1日 深海の街 3位
■シングル
発売日 タイトル c/w 最高位
1 1972年7月5日 返事はいらない 空と海の輝きに向けて ー
2 1973年11月5日 きっと言える ひこうき雲 ー
3 1974年4月20日 やさしさに包まれたなら 魔法の鏡 ー
4 1974年10月5日 12月の雨 瞳を閉じて ー
5 1975年2月20日 ルージュの伝言 何もきかないで 45位
6 1975年10月5日 あの日にかえりたい 少しだけ片想い 位
7 1976年3月5日 翳りゆく部屋 ベルベット・イースター 10位
8 1977年5月5日 潮風にちぎれて 消灯飛行 31位
9 1977年11月5日 遠い旅路 ナビゲイタ 38位
10 1978年3月5日 ハルジョオン・ヒメジョオン 罪と罰 80位
11 1978年7月20日 入江の午後3時 静かなまぼろし 88位
12 1978年10月5日 埠頭を渡る風 キャサリン 71位
13 1979年6月20日 帰愁 稲妻の少女 89位
14 1980年3月20日 ESPER よそゆき顔で 77位
15 1980年5月21日 白日夢・DAY DREAM ためらい 44位
16 1980年8月5日 星のルージュリアン 12階のこいびと 46位
17 1981年6月21日 守ってあげたい /グレイス・スリックの肖像 2位
18 1981年11月1日 夕闇をひとり A HAPPY NEW YEAR 48位
19 1983年8月25日 ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ 時をかける少女 9位
20 1984年2月1日 VOYAGER〜日付のない墓標〜 青い船で 9位
21 1985年8月1日 メトロポリスの片隅で パジャマにレインコート 8位
22 1987年11月5日 SWEET DREAMS SATURDAY NIGHT ZOMBIES 7位
23 1989年6月28日 ANNIVERSARY〜無限にCALLING YOU /ホームワーク 2位
24 1993年7月26日 真夏の夜の夢/ 風のスケッチ 1位
25 1994年7月27日 Hello, my friend /Good-bye friend 1位
26 1994年10月24日 春よ、来い 1位
1995年2月20日 (発売中止) 命の花 砂の惑星 ー
27 1995年11月13日 輪舞曲 (ロンド) Midnight Scarecrow 2位
28 1996年7月15日 まちぶせ 5位
29 1996年10月16日 最後の嘘 忘れかけたあなたへのメリークリスマス 4位
30 1997年1月29日 告白 Moonlight Legend 10位
31 1997年11月12日 Sunny day Holiday 夢の中で〜We are not alone, forever 10位
32 1999年11月3日 Lost Highway Spinning Wheel 20位
33 2000年9月20日 PARTNERSHIP So long long ago 18位
34 2001年1月11日 幸せになるために TWINS 6位
35 2001年4月25日 7 TRUTHS 7 LIES〜ヴァージンロードの彼方で Song For Bride TUXEDO
RAIN ANNIVERSARY 16位
36 2003年2月5日 雪月花 59位
37 2005年6月1日 ついてゆくわ あなたに届くように 13位
38 2006年2月15日 虹の下のどしゃ降りで Smile again 22位
39 2007年9月5日 人魚姫の夢 Au Nom de la Rose 19位
40 2010年5月26日 ダンスのように抱き寄せたい バトンリレー 15位
41 2012年3月14日 恋をリリース 夜明けの雲 34位
■ユーミンの80年代、90年代
アルバムのセールスという点では、1981年から97年という時期においては最もアルバムが売れた時期でした。シングルという点では「あの日にかえりたい」「守ってあげたい」「真夏の夜の夢」「Hello, my friend」「春よ、来い」「輪舞曲 (ロンド)」については、1位・2位の実績があり、確かに売れたということは言えるかもしれません。
しかし17年間の間、アルバムがブレイクし続けたということのほうが、実は重要であると思います。ユーミンが自身で「自分はアルバムアーティスト」であると宣言する通り、それは並々ならぬ力量だからです。
この時期のユーミンはポップスに磨きをかけ、高度経済成長の波に乗ってアルバムを売りまくった一方で、シングルで1位を記録した歌は、不思議なほど少ないようです。
アルバムが50万枚オーバーのセールをするということは、シングルに換算すると数枚分のミリオンに匹敵するものと考えられますから、半端ない収益をあげているのだと思います。
その意味で、これら20年近い時期はユーミンの時代だったいうことができると思います。芸術の質とセールスの相関関係は基本的に比例しないものではありますが、取りあえず一つの材料として、この時期の数値を表してみます。
12 1981 昨晩お会いしましょう 1位 (52.4万枚)
13 1982 PEARL PIERCE 1位 (49.3万枚)
14 1983 REINCARNATION 1位 (48.8万枚)
15 1983 VOYAGER 1位 (66.9万枚)
16 1984 NO SIDE 1位 (60.7万枚)
17 1985 DA・DI・DA 1位 (70.2万枚)
18 1986 ALARM à la mode 1位 (68.5万枚)
19 1987 ダイアモンドダストが消えぬまに 1位 (77.2万枚)
20 1988 Delight Slight Light KISS 1位 (158.4万枚)
21 1989 LOVE WARS 1位 (161.3万枚)
22 1990 天国のドア 1位 (197.5万枚)
23 1991 DAWN PURPLE 1位 (190.1万枚)
24 1992 TEARS AND REASONS 1位 (146.4万枚)
25 1993 U-miz 1位 (138.2万枚)
26 1994 THE DANCING SUN 1位 (217.2万枚)
27 1995 KATHMANDU 1位 (134.0万枚)
28 1997 Cowgirl Dreamin’ 1位 (78.9万枚)
29 1997 スユアの波 2位 (49.5万枚)
ここには上げていないデータですが、直後のベストアルバム「ノイエムジーク」は325.2万枚のトリプルミリオンセラーとなっていて、びっくりします。
これらの結果は、確かに驚異的なものだと言えます。テレビで中居正広がMCする番組で、収入を問われた時に、ユーミンは「ポール・マッカートニーの1/100くらい」という表現で答えていました。それが、事実かどうかは別としても、ポールと比較できるというビックさとその回答の粋さがとても印象的でした。
ユーミンにとって黄金の80年代・90年代を経て、その後の2000年代以降は、数々のユーミンの曲が既にスタンダードナンバーとしてすっかり定着したと言えるのではないでしょうか。
今2022年10月現在、「ユーミン万歳!」という3枚組(51曲入り)ベストアルバムをリリースしたばかりのユーミンですが、その売れ行きも好調のようで、これから始まるアリーナツアーへの弾みとなることでしょう。


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