歌のシュールが半端ない曲の紹介
たくさんある中で、ここでは取りあえず次の二人の歌を取り上げてみましょう。
1.泉谷しげる
・翼なき野郎ども(アルバム「80’バラット」1978年)
・デトロイトポーカー (アルバム「80’バラット」)
・流れゆく君へ(アルバム「80’バラット」)
・ミストレス(アルバム「39゜8’」1994年)
2.ユーミン
・時のないホテル(アルバム「時のないホテル」)
歌における「シュールな表現」は、探してみれば結構あります。
ここに挙げた歌やアーチスト以外にもたくさんあると思います。
まず、「シュールな表現」で思い浮かぶのは泉谷しげる氏です。取りあえず氏の4つの曲名を挙げてみましたが、泉谷氏はフォーク時代から、たくさんそういうものがありました。
私は、かつて
「僕のお腹をきりさいてみたら 数えきれない他人がこぼれ..」というフレーズが記憶にあり、彼は昔から尋常でないシュールな表現者なのですよ。
「翼なき野郎ども」「デトロイトポーカー」の2曲は、アルバム「80’バラット」にあるものですが、このアルバム自体の価値としてロックバラードという新ジャンルを実現し、その完成形がここにあると言わしめるほどのいい出来だと思います。
加藤和彦という類稀な才能の持ち主と泉谷の野獣性とのコラボレーションによる爆発的なロックの創出なのですが、私としてはこの次のアルバム、「都会のランナー」と二つの作品をもってロックバラードは完成したのではないかと思います。
ロックミュージシャンがライブでバラードを歌うことはもちろんあると思いますが、曲そのものがロックバラード仕立てになっていることはほとんどないと思いますので、この2曲は新しいものとしてそこにこそ価値はあるのではないでしょうか。

「翼なき野郎ども」
火力の雨降る街角
なぞの砂嵐にまかれて
足とられ
ヤクザいらつく
午後の地獄
ふざけた街にこそ家族が居るこんな街じゃ俺の遊び場なんか
とっくに消えてしまったぜ
なのに風にならない都市よ
なぜ俺に力をくれる
ああ いらつくぜ ああ感じるぜ
とびきりの女に会いに行こう
(中 略)
地鳴りする都市よ
なぜ俺に力をくれる
風にならない都市よ
なぜ俺に力をくれるああ 感じるぜ ああ燃えてくるぜ
とびきりの女に会いに行こう
とびきりの女に会いに行こう
「デトロイトポーカー」
エイジ 青い奴らが手引きする
赤い街のゴミになる気かよ
エイジ 遠い窓の外に写る
カードをくわえたまま
生まれたならず者
デトロイト・ポーカーを知ってるだろう
街の頭の中を指す
数がそろわねェ
エイジ 女の宝に泥をぬる
サテンのテーブルをけとばすならず者
この2曲は、私の印象として「都市」の底辺でごみ溜めを漁るようにして生きているならず者たちの生態が歌われているようなイメージである。テーマはズバリ「都市」です。タフで無法地帯の底辺のような街でバトルする無鉄砲な男達が目に浮かぶ
言葉がシュールなだけではなくロックバラードのサウンドがとても、場面に似つかわしくよく出来ている。ドライブ感も抜群で最高級のアレンジが施されている。
言葉のシュールさは一目瞭然で、一つひとつ取り上げて説明するのはほとんど意味がありません。
「火力の雨降る街角 なぞの砂嵐にまかれて」
初めから既に、SFチックであったり、「地鳴りする都市」、「青い奴ら」、「赤い街」など挑戦的な文言が並んでいるのは、ならず者のイメージでしょうか。
このようにシュールな歌は、額面通りに意味やストーリーを理解しようにも難がありますので、それは無駄な努力かも知れません。ですが、そうであるだけにイメージの強さ(インパクト)はあります。
そして、そのインパクトの強さと自由さ故にサウンドの完成度と上手く相まっていい効果をもたらすことになります。いい歌程、何度も聴くうちに深い味わいが病みつきになることでしょう。
表面的に綺麗なだけの歌よりも、飽きがこない長く付き合うことのできる歌になるかも知れません。
この受け手が難しいと思えるような歌を、自ら発信するのは、さらに難しいことかも知れません。ですが、とても意味のあるチャレンジであることには間違いありません。
「流れゆく君へ」
流れゆく君の 粒のひとつまで
つかんでみたい
川の流れは 血よりもはやい
流れゆく 君のからだ
うねりにまかれて 君はちらばる
変わりすぎるより たしかにひびく
生きることばの 速さがいいぜ2度とであえない 流れを見たら
時へ おまえが始まる
つきぬける気持ちの 果てしなき意志
ゆれる水と耳鳴り
うねりにまかれて 君はすぎてゆく
転がるだけより たしかにとどく
生きることばの 速さがいいぜ
「流れゆく君へ」:これを聞けば女性の肉体が拡散? 崩壊?して散らばっていくようなイメージでしょうか?
「川の流れは 血よりもはやい」
「つきぬける気持ちの 果てしなき意志」
「生きることばの 速さがいいぜ」
等々、ゴロが良く、センスのいい言葉が並んでいます。
これらの全体から、貴方はどんなイメージを持つのでしょうか?
「川の流れ」と「血の速さ」を比べる感覚は突飛でスゴイし、「意志」という語は歌の中では使いにくい言葉です。それを使いこなす技はどうでしょう、貴方もチャレンジしてみては。
「ミストレス」
君の言葉で 耳さえ踊るよ
こんな気持ちが まだ俺にあるとは
二人の瞬間を食べ (瞬間=「とき」)
素肌の匂いに酔う
心が罪さ 体よりもずっと
心が罪さ こうなる前から
ミストレス 君を
ミストレス そう呼ぶ
ミストレス ミストレス君を想う 夜だけじゃなく
眼の前にある 時間のすべてを
心が罪さ 体がよりもずっと
心が罪さ こうなる前から
ミストレス 君を
ミストレス そう呼ぶ
ミストレス ミストレス
「ミストレス」(Mistress)にはいろんな意味があるようですが、ここでは「女主人」ではなく「愛人」という意味でしょうか?
ですから、甘く危険な香りのするような感じかな。
まあ、大人の恋? アダルトな熟年の恋? という内容で受け止めれば「当たらずとも、遠からず」ということ、そんなところでしょうか。
私自身は、「心」と「体」の二元論で恋?を語る面白さは好きです。確かに昔、よくこんなことが語られていました。
「下半身に人格はない」と。この歌の場合は逆ですが。
このアルバム「「39゜8’」は、11曲中どの曲もシュールな歌オンパレードです。シュールさがアルバム自体のコンセプトなのだと思います。泉谷と言えば野獣のような歌ばかりではない、未来的な歌もあるということの証です。
「シュール」を自分の曲に取り入れてみたいと願う人ならば、トレーニングとしてこのアルバムを聴いてみるという方法はアリかなと思います。
「時のないホテル」松任谷由実 作詞:作曲
このアルバムは、ユーミンには珍しく割とシュールな曲の多いアルバムです。このあたりの曲を多く歌ったシャングリラツアーは、ユーチューブで少し見たのですが、サーカス団とコラボしたアクロバティックな凄いツアーのようですね。演出が圧巻です。是非あなたも、見てみてください。

ゆうべロビーのソファで出会い
愛し合った紳士は
朝焼け前に姿を消した
東側のタバコの吸いがら
電話のわきのメモはイスラエルの文字
さっきお昼のカフェで話し
ろう下で見たレディは
かつらの色がガラリとちがう
こっそり開くパフにしこんだアンテナ
口紅から発信機の音
彼らの写真は新聞を飾る
蜂の巣になり広場に死す固いニュースはすぐに忘れて
ゴシップだけが残る
回転ドアを少しまわせば
外の空気が流れ込むけどあわてて
とめに来るよ 制服着たボーイが
世界のあちこち目には映らない
激しい河がうず巻いてる
ここは置き去りの時のないホテル
20世紀を楽しむ場所
ひげを抜かれたお客はみんな
けっしてここを出てはいけない
けっして
出てはいけない 出てはいけない
出てはいけない 出ては
この歌は、もしかしたらシュールな表現というよりはSF小説的なドラマ仕立てなのかも知れません。
それでも、「時のないホテル」というのは「いったい何?」と感じるシュールさです。そして、登場する人物はどれも謎めいていて、怪しく危険な香りに満ちています。
登場人物がみんな怪しいスパイのような行動をとり、互いを探り合っているだけでなく、貶め合い、けん制し合っている。
なのにここは、金持ちたちが20世紀を楽しむ場所だという。このホテルは出ることが出来ない監禁された空間である。ちょっと訳の解らない不思議な場所なのだ。


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