ユーミンがバンバンに書き下ろしたメイクドラマの決定版
ユーミンは自分のラジオ番組「ユーミンコード」で当時「学生運動に関するテーマで曲を作りたいと思っていた」と語っていました。
世代的にユーミンは、学生運動世代の一歩後の世代で、子どもながらにその時代を肌で感じていたことは確かだと思います。
それが、映画「いちご白書」の登場で、一気にユーミンのメイクドラマ魂が花開いたことでしょう。この映画の存在をベースにしてある男女の恋の思い出という時間的奥行きをうまく上手く演出した歌に仕上がっています。
正確には、歌が既に先に仕上がっている状態で、バンバンからオファーがあったということらしいです。「ちょうどいい歌があるのよ。それをあげるわ。」みたいな乗りなのでしょうか。
■映画「いちご白書」とは
そもそも、映画「いちご白書」というものを貴方はご存知でしょうか? 少しだけ解説しておきます。
この映画の舞台はニューヨークのコロンビア大学での学園闘争がモチーフとなっています。学生たちの要求を学長がはねつけたことに端を発した学園紛争です。
その時の学長の言い草が、「君たちの要求は、苺の味が、甘いか甘くないか程度の取るに足らない要求だ!」とした表現をされたことにより、一気に学生たちの反発がマックスに達したというものです。
そこに「いちご白書」という題名の由来があります。
つまり、そういう意味ではかなり純粋な学園紛争だったと言うことが出来そうです映画の中では真面目に闘争運動するキム・ダービー扮する女子学生と好奇心と下心で運動に参加したブルースデイビス扮する男子学生との恋のようなものを下敷きにしながら、学園紛争が進行します。
結末としては、機動隊による強制排除の場面で終わります。敗北という意味では日本の大学と似ています。この映画のテーマ曲は「サークルゲーム」といってパフィー・セント・メリーが歌い当時結構ヒットしました。
因みに、この時期世界中で学生紛争が同時に吹き荒れていました。
アメリカはもちろん、パリ大学の紛争も有名ですし、日本全国あちこちでも学園闘争は盛んで、日本では東京大学や日大紛争はその象徴のようでもありました。
■「いちご白書をもう一度」歌詞について
作詞:作曲 松任谷由実 1975年
いつか君といった映画がまたくる
授業を抜け出して二人で出かけた哀しい場面では涙ぐんでた
素直な横顔が今も愛しい雨に破れかけた街角のポスターに
過ぎ去った昔があざやかによみがえる
君も見るだろうか「いちご白書」を
二人だけのメモリーどこかでもう一度僕は無精ホゲと髪をのばして
学生集会にも時々出かけた
就職が決まって髪を切ってきた時
もう若くないさと君に言いわけしたね雨に破れかけた街角のポスターに
過ぎ去った昔があざやかによみがえる
君も見るだろうか「いちご白書」を
二人だけのメモリーどこかでもう一度
「いちご白書」という映画のリバイバルをきっかけとして、過去を引きずる男性のメロウな恋の思い出ソングとして、ユーミンお得意の完全ドラマ化をしています。
この歌の出だしは歌うバンバンのバックにメロウなエレキギター音が入ります。ライブでもアコースティクな生ギターのバックに効果的にエレキ音が入ります。
珍しくもそのエレキの音に胸が締め付けられるように泣けるというのも、素敵です。
ストーリーは、学生時代の恋人と一緒に見た映画「いちご白書」をきっかけとして、学生運動世代(団塊世代)の自分の当時の体験が重なり合い、共鳴し合って蘇るというもの。
この歌の私の読みとしては、今は企業戦士?として働く男性が、学生当時の恋人、素直な彼女との甘酸っぱい想い出は今も忘れることができないでいるというものです。
後悔の念と別れた彼女への未練心、日頃は仕事の忙しさに紛れて忘れていることも多いが、きっかけさえあればそうやっていつでも蘇るのです。
過去に引きずられる男の女々しさと共に、このような同様の体験をしたであろうたくさんの男たちの心に、魚の小骨のように喉の奥に引っかかって取れない何かとして、「実は俺も」という気持ちを抱かせるのだと思う。
「雨に破れかけた街角のポスターに
過ぎ去った昔があざやかによみがえる」「僕は無精ホゲと髪をのばして
学生集会にも時々出かけた
就職が決まって髪を切ってきた時
もう若くないさと君に言いわけしたね」
私は、このあたりのくだりがとてもイケテルと思います。
「雨に破れかけた街角のポスターに」
には路地裏などの場末の感じがよく出ているし、古さとしての時間的な奥行きも見事に表現されています。そこに、昔を今も引きずる男が一人佇んでいる姿は痛々しい。
これは、ユーミンから団塊世代(学生運動世代)のすべての男性に捧げるレクイエムかもしれません。
蛇足ですが、「就職が決まって髪を切ってきた時」とはその当時において就活中は髪を伸ばしていても良かった時代だったのですね。それもビートルズ世代なるが故のことでしょうか。
今なら、就活解禁第一日目にはリクルートスタイルに身を包んだ短い髪の男性たちが往来を行き来するのですが、まさしく時の隔たりを感じさせられますね。(笑)
さて、今回のユーミンのメイクドラマ術はどうでしたか?


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