■「さくら」「サクラ」がタイトルにつく歌
今回のテーマは以前から気にかかっていたことです。
「さくら」「サクラ」「sakura」などの曲名の同名異曲が世の中に溢れています。ざっと60以上もあるそうです。それでも、一番多いのはさくらではなく「ひまわり」の名のつく曲だそうですが、今回は「さくら」について論じてみることにします。
有名なところでは以下のような曲があるようです。
・福山雅治「桜坂」
・河口恭吾「桜」
・コブクロ「桜」
・森山直太朗「さくら」
・ケツメイシ「さくら」
・いきものがかり「sakura」
・嵐「Sakura」
・三代目J Soul Brothers「S.A.K.U.R.A」
等々です。まだ他にもあります。
ここでは、それらが「名曲」であるか否かは取りあえず横に置くとしても、私は、これらの曲作りの動機の不純さがまず気にかかります。
そしてその不純と思われる動機の特徴としては、大きくは二つの側面があると思われます。
一つ目は、日本人の場合「さくら」という語句が検索キーワードとしてたくさんヒットしやすいものだということが容易に想像できます。
となれば、この言葉をキーワードとしてタイトルに入れ込めば検索にヒットし易くなることはもちろんなので、それだけ曲のヒットの可能性が高まると言うことが考えられます。つまり、これは曲のヒットねらいのための動機が見え隠れしています。
二つ目は、さくらの花見好きな日本人の共通した境地や感性に故意に乗っかっているのだと思えます。つまり、「さくら」をテーマにしさえすれば多くの人(日本人)に共感してもらえるという計算が始めにあると言えそうです。
■「才能あり」か「凡人」か「才能ナシ」か
俳句で言うならば、夏井先生のよく言われることに「これは凡人の中の凡人」という評価があるのですが、「さくら」狙いはまさにそれに当たると思います。
ところが、歌謡曲やJ-popの世界では、これがビックキーワードであるためにヒットの要因となり易い現象が起こります。
俳句で優劣をつけるような場合は、ざらにあるような似たテーマや境地が多い場合には評価が低くなります。そんな俳句は「他にも似たものが五万とあります」という先生の言葉と共に低評価になることがしばしばです。
ところが、歌としての「さくら」の曲の場合は検索キーワードとしてビックなので、ヒットや収益を生む可能性が高まります。つまりオリジナル性のなさがヒットを生むという今のネット社会の特徴があります。
「さくら」の言葉から連想される似たテーマ性とは、以下のようなことでしょうか。
・季節柄、「卒業」や「友との別れ」などがテーマと成り得る。
・入学や就職など、新しい生活の始まりや出会いのイメージ。
・さくらの散る様は、昔から「はかなさ」の代名詞として、知らず知らずのうちに日本人の美的感性に響くDNAとなって今日に至っていることも考えられます。が、それは同時にアートとしてのオリジナル性を損なうということでもあります。
したがって、当然ながらですがこれら多くの歌には、テーマ性のカブリがかなりの部分あると思われます。そこにきて凡人の感性は、オリジナル性の追求よりも、むしろ多数派におもねて媚びることを常としています。
つまりは、「桜」「さくら」のテーマの曲は凡人向きの歌の集合体なのでした。因みに、ユーミン(松任谷由実)は、「さくら」の文言の入った曲は作っていないと思います。
その代わりに彼女には、「ハルジョオン・ヒメジョオン」や「エノコログサ」などの語句を歌へオリジナル性豊かに引っ張り込んでいます。
アート(芸術)とは、オリジナル性が命です。楽曲をアートの端くれと考えれば私は迷わずユーミンに一票を入れたいと思います。それが本来あるべきアーティストの姿だと思うからです。
あの有名な「春よ、来い」ですが、テレビで櫻の風景が写る場面のBGMとして、この曲が流れていたので、私はアレッと思い歌詞を確かめたのですが、やはり歌詞の中に「さくら」の言葉はなく、その代わり「沈丁花」という花の名前が使われていました。さすがユーミンですね。
安易に「さくら」などのビックキーワードには乗っからない、表現者としてのプライドがあるのでしょうね。
関ジャムに松任谷正隆氏がゲストで登場された時の話です。「春よ、来い」のこの歌ですが、ユーミンは最初は洋楽のイメージでまとめたかった曲なのだそうです。アレンジの松任谷氏の「和」のイメージで行くべきとの意見があり、珍しく口論となったそうです。
でもその結果は「和」のイメージで大ヒットしたのでした。これもアレンジャーとの才能の激突から生まれた秀作なのですね。
■将来、貴方が迎える分岐点とは
シンガー・ソングライターを目指しているあなたならば、以上のようなことも踏まえて曲作り,歌詞作りをチャレンジして見てください。
歌詞は芸術(文芸)であるという観点から、よりいいものを目指すのがクリエーターの良心的な務めだと私は思うのですが。
何事も、素人(凡人)向けのビックキーワードで計算高く金銭狙いでいくのか、芸術家の端くれとして文芸アートにこだわるのかは、一つの分かれ道かも知れませんね。


コメント